2011年06月11日

峪の闇に亀が鳴く

峪の闇に亀が鳴く

【ダンス公演】
峪の闇に亀が鳴く タニノヤミニカメガナク

日時:2011年6月10日(金)19:30 *初演
場所:アークホール(静岡ハリストス正教会)
企画:much in little DANCE + tzudoi


雑感

 知人のコンテンポラリーダンサーの鈴木加奈子さんを中心として、音楽家、美術家の協同により構成されたダンス公演が年に1度か2度のペースで定期的に開催されているのだが、なかなか都合が合わず機会を逸していた。今回ようやく見ることが出来た。
 公演場所は静岡市葵区春日町にある静岡ハリストス正教会内のアークホールがお決まりである。木造造りのこの建物はこじんまりとしたものだが天井が見事なアーチを描いており、教会独特の静謐な雰囲気をにじませている。舞台セットはこの引き締まった空間を利用して主張しつつも決してでしゃばりでない。それは本公演の舞台美術を手がけている現代美術家奥中章人氏が繊細な針金を使っているからだろう。彼は知覚彫刻と称して立体作品を制作している。動かないことが彫刻の前提となるだろうが、彼の彫刻は自由に変容する。ここではその特徴が効果的に現されていた。柔らかい彫刻がじっとりと身体にまとわりつく感覚。
 ダンサーは鈴木さんの他に舞踏家の岡庭秀之氏が参加している。そのためだろうかダンスはきわめて土着的、民話的な日本の身体を思わせた。踊っているというよりは戯れているという感じだ。もちろんそこに洗練された動きがあるのはプロの仕業ということ。この二人に竹笛の森口紋太郎氏と太鼓の星合厚氏が絡んでいく。森口氏の竹笛は自作品で地元に生息している変哲も無い竹から出来ている。その音はきわめてドメステック。じっとりとした夜の闇の中で聞く懐かしいその音色は場をノスタルジィで染めてしまいがちだが、ダンサーはそんな淡い思い出に対抗するような迫力で舞う、這いずる。
 約1時間の公演は森口氏の笛がフェードアウトして終了した。無音になったホール。と同時に窓の外から聴こえる虫の声がホールを満たしていった。
 今夜、夏が始まった。


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Posted by 柚木康裕 at 07:16│Comments(0)演劇・ダンス
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