2012年09月12日

「交響曲 月に吠える」雑感 〜青春という交響曲〜

交響曲 月に吠える 先日、アトリエみるめで演劇「交響曲 月に吠える」を観劇。終演後のアフタートークに参加させて頂いた。かなりまったりしたトークになってしまったが、とても楽しい時間を過ごすことが出来た。改めてお礼を述べたい。(写真は大野さんと出演者の皆さんとの記念写真)

 舞台もとても見応えのあるものだった。主人公を除く3人の役者がめまぐるしく役を変えながら萩原朔太郎という人物を描き出していった。言葉の人を意識させるシンプルな舞台装置の効果は素晴らしく、舞台にリズムを生むオルガンの生演奏も楽しい。コミカルな掛け合いが笑いを誘う。あっという間の終演が舞台の充実感を物語っていたと思います。

 改めて雑感を書いてみたので掲載します。時間があればお付き合いください。
  (敬称は省略させて頂きました)

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おおのの♪ 萩原朔太郎没後70年追悼ツアー
「交響曲 月に吠える」雑感

 静岡市駿河区寿町にあるアトリエみるめにて観劇。作・演出を手掛けるのは花組芝居の大野裕明。本公演は彼の主宰する劇団「おおのの♪」の作品として上演された。

 『月に吠える』とは近代詩の父と云われる萩原朔太郎の処女詩集である。大正6年32歳に自費出版で刊行。口語体で書かれた詩集はこれまでにないインパクトを与え彼の名を知らしめることになった。この詩集を背景に萩原朔太郎という人物を描いたのが今回の舞台となる。

 交響曲とタイトルにあるが、この演劇は音楽劇ではない。確かにピアニストが舞台上で生演奏するが、もちろんピアノ(静岡公演は年季の入ったオルガンだったが)の伴奏だけでは交響曲と云えるはずもない。とすれば交響曲となずけた意味はどこにあるのだろうか。

 舞台は虐められっ子だった子供時代からはじまり多感な20代から30代を描きだす。室生犀星との出会い。親との葛藤。東京での生活。結婚と離婚。前橋への帰郷。詩人の人生を想像するのは詩を理解することと同じように難しいが、舞台の萩原朔太郎は、市井の人々と同じ悩みを持つ生活人であり、誰もが経験する青春という嵐を月並みに経験していた人間だった。

 つまり大野はこの時期に歌われた詩の数々を青春の痕跡と見立て、それがお互いに複雑に絡み合いながら、ひとつの詩集に結実している有様を交響曲とよんだのではないだろうか。萩原朔太郎の生涯の友だった室生犀星をはじめ、両親、妻子、芥川龍之介、宇野千代等々、めまぐるしく変わる客演者がオーケストレーションに一層の厚みをもたらす。

 若者特有のほとばしる汗はシンフォニーをより激しく響かせたが、それゆえに青春の終わりとともに交響曲も終わりを迎える。萩原朔太郎の魅力を処女詩集『月に吠える』に見た大野はその青春の輝きを次の世代に引き渡して舞台を閉じた。

 壮大な演奏はそれが終わった後の静けさも一際だろう。まるで砂漠を歩いているときの静けさにも似て。『地獄の季節』で一躍寵児となった詩人アルチュール・ランボオが筆を立ち、砂漠に向かったことをふと思い出した。

2012/09/08 アトリエみるめにて

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本公演は9月15日に前橋で上演されます。
萩原朔太郎のホームでの公演ということで、大野さんはかなり緊張気味でした。(笑
お近くの方はぜひどうぞ。
情報はこちらで → おおののオフィシャルページ


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Posted by 柚木康裕 at 10:41│Comments(0)演劇・ダンス
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