2009年12月03日
劇団渡辺2009冬公演「椅子」

劇団渡辺2009冬公演「椅子」が現在寿町倉庫で上演中だ。
劇団渡辺の本公演は古典戯曲のみを扱うという地方劇団では特異な存在である。予定調和な舞台に終止しがちな地方の演劇界にあって演劇そのものを常に問いている。ただし舞台は重苦しい世界が充満しているかといえば、そうではない。彼らの重要な持ち味のひとつにギャグや外しのテクニックがある。悲劇のさなかにさりげなく忍び込ませて、観客を煙にまく。それは異化効果にように我々に作用し、現実と虚構を行き来させる。
ウージェーヌ・イヨネスコの不条理演劇「椅子」は副題に悲劇的笑劇とあることが興味を高まらせた。この公演の主題がここにあるようにも推測できる。
主人公は95歳の老人と94歳の老婆。この二人を劇団渡辺二大看板(?)の大石宣広と蔭山ひさ枝が演じる。大石と蔭山は小劇場のレベルを超えた実力を持っているとつねづね感じているのだがどうだろうか。二人芝居ともいえるこの戯曲では当然の配役だろう。二人の掛け合いは実に息の合ったところをみせる。この日も言葉がすれ違い、重なり合いながら独特の間合いをみせていた。ただこの舞台の演出的面白さはほかにもある。奇妙な仕掛けが施されているのでそれは実際の舞台を確かめてほしい。
人生の終幕を迎えつつある老夫婦。
夫は自分のメッセージを伝えることが使命と決めつけお客を招く。
ただし口べたな夫はしゃべらず代わりに弁士を雇う。
次々と現れるお客。ただし姿は見えず椅子の数だけ増える。
そして、いよいよ弁士が登場といったところで・・。
舞台は「椅子」の台本通りに進む。
老夫婦の言葉は進むにつれ熱を増す。そう、劇団渡辺の舞台はいつも言葉は十分な熱を帯び質量ある存在として現れる。また逆に沈黙が輝きだす。演出家渡辺が古典を好む理由であろう。古典とはスピリットをもった言葉によって綴られているのだとしたら、それを現代において再生させたいという意欲が見てとれる。もっともそれはしばしば過剰だと受け止められるようだが。それでも本作においてもなお突き進んでいるところに好感を持つ。過剰のあとに静けさ(希望ともいうのかもしれない)はやってくるという確信なのだろうか。
いまや不条理は自虐的な冗談としか扱いようの無い状況/現代において、劇団渡辺「椅子」が演出に取り入れているギャグは示唆に富んでいる。
舞台を笑っているのか。私が笑われているのか。
100%の力で体当たりして生み出す役者の熱さに圧倒されながらあっという間に終幕。
会期は残り2日間。
摩訶不思議な世界をぜひ。
劇団渡辺2009冬公演「椅子」-悲劇的笑劇- >> HP
演出・構成:渡辺亮史
原作:ウージェーヌ・イヨネスコ
出演:大石宣広、蔭山ひさ枝、成戸瞬介、梅田大三、渡辺亮史
入場料:前売り1500円、当日2000円、学生1000円
会場:寿町倉庫 >> 地図
日時:11月28日(土) 19時開演
29日(日) 15時開演
30日(月) 19時開演
12月 4日(金) 19時開演
5日(土) 15時開演
Posted by 柚木康裕 at 18:44│Comments(0)
│演劇・ダンス