2012年09月24日

風景美術館でかんがえたこと

風景美術館でかんがえたこと 先週リニューアルオープンした日本平ホテルのコンセプトは風景美術館ということ。この言葉を聞いた時、上手い名前を付けたものだと感心した。もっともそれは正面には富士山が鎮座し、遠くには西伊豆、そして眼下の清水港を一望できる絶景を楽しめるホテルに相応しい表現だと感心しただけではない。

 美術館は文化を創造し、蓄積し、啓蒙する拠点として存在する。日本平ホテルのある有度山の麓に位置する静岡県立美術館は86年の開館以来20年以上に渡りそのミッションを伝えてきた。その県美のキャッチコピーは「風景とロダンの静岡県立美術館」である。県美の収蔵品は風光明媚な土地柄を反映してか、「風景」がコンセプトとなっている。代表的収蔵品であるモネの「ルーアンのセーヌ川」はそれをよく表した作品である。また人気No.1の伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」も楽園の風景として見立てられる。

 ここで日本平ホテルのコンセプトは県美のコンセプトと重なる。「風景」というコンセプトで繋がった山頂と麓の施設。空高く俯瞰してその様子を見渡していると有度山の隠されたポテンシャルに気付かされた。

 感心した理由はその可能性を引き出せるきっかけが「風景美術館」という言葉にはあると感じたからだ。有度山はすぐ横に東照宮のある久能山があるが、それを含めて有度丘陵と呼ぶ。この有度丘陵には多くの社寺があり、麓には美術館や静岡大学、県立大学などの文化教育施設が存在する。また静岡県舞台芸術センター(SPAC)の野外劇場もある。実は有度丘陵はすでに一大文化地域としての体裁を持っているのである。(手前味噌だが、スノドカフェも麓に位置する。笑)

 もちろんそれらは歴史的な魅力も兼ね備えている。東照宮は言うに及ばず、清水側には山岡鉄舟が復興した鉄舟寺や日本武尊の剣伝説が残る草薙神社など、食指を動かされるものは多い。まだまだ調べれば興味深い歴史が顔を出すだろう。(アースダイバーにはもってこいの地域ではないだろうか)

 この空間的広がりと歴史的広がりというふたつのパースペクティブに気付くと、俄然有度山が魅力的に見えてくる。それを頂上から見渡しているのが文化拠点としての風景美術館日本平ホテルならば面白いことになりそうだ。(ただし美術館という概念も近年行き詰っている。そこに自覚することが必要に思われる)

 と夢想していたら、先日の新聞に「有度山三施設フレンドシップ協定」という記事が掲載された。県美、SPAC、日本平ホテルの3施設の連携強化によって日本平の魅力をアピールするために状況交換や催事への協力、将来的には共同イベントの開催も目指しているとある。やはり有度山の魅力には気付いていたのである。

 ぜひ3施設に留まらずに有度山(丘陵)全体をネットワークし、ダイナミックな地図を描き出してほしい。それには行政だけではきっと難しいことだと思う。この土地に暮らす人々と積極的な関わりを持って盛り上げていくことを期待したい。


風景美術館でかんがえたこと
日本平ホテルのファサード。ラウンジから見る景色は一見の価値あり。ぜひ。^ ^


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Posted by 柚木康裕 at 19:15│Comments(0)アート・美術
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